• 情報計測オンラインセミナーシリーズ
  • - 数理・情報科学×計測科学の高度融合による新展開-

趣旨

 学問の発展の歴史を紐解くと、科学の進展と「計測科学」の発展は極めて密接な関係があることがわかります。 例えば、ギリシャ時代の測量から幾何学が発展し、ティコ・ブラーエが残した膨大かつ精密な天体観測を通して、ケプラーの法則、そしてニュートン力学が生まれました。 いま、日本が強みを有する計測技術を近年急速に進展している情報科学・数理科学等と融合しこれまでの計測の在り方・概念を変える、または、計測との融合を通じて数理・情報科学における新たなシーズを創出する、数理・情報計測科学あるいは計測インフォマティクスとも呼ぶべき新たな学際領域が生まれつつあります。

 最先端の大掛かりな計測装置から日常生活で用いられる超小型センサまで、一口に「計測」と言っても実に多種多様です。 近年の計測技術の高度化に伴い、計測装置やセンサの開発には、必要な材料やデバイス、ハードウエアに立ち入った専門的基礎研究が必要とされ、研究開発は個々の計測技術ごとにますます細分化される傾向にあります。 一方で、機械学習や深層学習、高度な統計的推定をはじめとする数理・情報科学が著しく発展し、これらと計測科学を横断的に融合する機運が大いに高まっています。 しかしながら、これまで世界的にもこのような学際領域研究と位置づけられる数理・情報科学を積極的に最先端の計測科学に取り込む努力は不十分でした。 これは個々の具体的な計測技術開発に比べ、数理・情報科学は抽象的であるため、それを取り込むことによって計測技術にどのような進展をもたらすかがすぐにはわかりにくいことが理由の1つです。 また、計測科学と数理・情報科学の両方を深く理解し、両者の橋渡し役として異分野融合に挑戦する人材が極めて不足していることも大きな理由です。

 科学技術振興機構のCREST・さきがけの研究領域“[情報計測] 計測技術と高度情報処理の融合によるインテリジェント計測・解析手法の開発と応用”は、文部科学省が2016年度に策定した戦略目標および研究開発目標“材料研究をはじめとする最先端研究における計測技術と高度情報処理の融合”の下で研究活動を開始しました。 また、人工知能学会において、2018年に「情報科学の立場から計測を捉える」計測インフォマティクス研究会が立ち上がりました。 世界的に見渡しても、このような計測科学と数理・情報科学の横断的かつ具体的融合を図る組織立った研究活動は珍しく、横断的に計測を捉える数理・情報科学と個々の計測科学との融合によって、ハードウエア中心の計測技術開発のみでは到底成しえない新しい計測を実現するブレークスルーが生まれ始めています。

 計測科学と数理・情報科学が高度に融合することにより、どのような学問の進展があり得るかを多くの方々とともに考え、興味を深めてもらうことを目的に、本セミナーシリーズを企画しました。 本セミナーシリーズは、計測技術や数理・情報科学が必ずしも専門ではない研究者や技術者の方々、そしてこれから計測科学や情報科学を志そうする学生の方も対象としています。

 皆様のご聴講をお待ちしております。